講師インタビュー

第2回:異文化コミュニケーション ~とにかくしゃべろう Your 英語~

Beetle1 代表 英会話コーチ
Shinji UEHARA(うえはら しんじ)

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生活していく中で英語がゼッタイ必要だった。
失敗の連続。たくさん間違えた。
マクドナルドでコーヒーをたのんだらコーラが出てきた。

――当時を振り返ってみて、印象に残っているエピソードはありますか?
あり過ぎて、話し始めると、時間がなくなるんじゃないかな。

まずは、飛行場に着いて、バスに乗ってマンハッタンへ行こうと思ったんですが、いまでいう白タクってあるじゃないですか、タクシー会社じゃないタクシーの人がいっぱい空港で待ってるんです。彼らが私たちに声をかけます、マンハッタンに行くのかとか。バスに乗ると言っても、「こっち来い、こっち来い」と連れて行かれるんです。違うパーキングに連れていかれて、これはやばいんじゃないかなと。そのまま着いていくと、お金をぼったくられる。まず、そこから逃げて、ようやく自分が乗りたかったバスに乗ると、バスの中で仲良くなったおばあさんがいたんですね。どこに行くんだ? 片言英語でこのホテルに行くんだと紙を見せると、そのおばあさんが私をタクシーに乗せてくれ、そのドライバーに行く先を告げてくれて、その夜は無事にホテルに着けた。

銃を突き付けられたことが3回あります。夜遅くに道を歩いていたのですが、後ろから、「ホールド・アップ(手をあげろ)」。お金を要求されたので、「ポケットに財布がある」と言いました。その男はポケットから財布を取り出して去っていきました。財布の中には20ドルほど入っていたのですが、20ドルで命拾いしました。ま、後ろを振り返っていないので、背中に突き付けられたのが本当に銃だったかどうかは実際わからないですけどね。

――英語を勉強するのはどのようにして始められたのですか?
これはね、もう失敗の繰り返しです。たとえば、着いたその翌日にマンハッタンを歩いて写真とか撮りますよね。そしたら、体格の大きな黒人5人くらいに囲まれて、「いま、俺たちの写真撮っただろう」と言われたんですよ。「いや、撮ってない」「撮っただろ」「撮ってない」のこのやりとりですね。撮ってないと押し切って何とかスルーできたんですけど、相手が言うことがわからない、こういうことを言ってるんじゃないかなというところからですよね。

お店に行ってコーヒーを一杯たのむにしても、指を刺しながら「this」[this]と。「これ」「これ」としか言いようがないんですよね。相手が逆に、私が日本人、オリエンタルなので英語がしゃべれないというのがわかりますよね、ですから「one?」、「two?」と尋ねてくれるんです。現地の人との直接コミュニケーションですね。勉強したという記憶はないんですよね。それをやらないと生活できないから、とにかく日本語を使う相手じゃないので、完全に英語の中へ入ってのやりとりですね。たぶん、たくさん間違えたと思います。言っちゃいけないことも言ったと思います。

――語学学校には行ってないんですか?
行ってないです。全く。

――少しずつわかってきて、日常生活に困らなくなるにはどれくらいの時間がかかりましたか?
そうですね。じつは日常生活に困るということはあまりないんですよ。たぶん日本の方がいまアメリカへ行って買い物をしたとしても、店員さんは何かものを買いにきたというのがわかるわけじゃないですか。だから、同じ場面を共有してますから、そこはあんまり言葉が通じなくても、指差すとかすると、相手が「これくらい欲しいのか」と手でやってくれますから、そこはコミュニケーション取れるんです。だから話せなくてコミュニケーション取れなかったというのはあんまりなかったです。

要するに、現地にいる人はみんなネイティブかというと違うんですよね。アメリカで生まれた人もいれば、中南米から移民として来ている人もいるし、とくに移民の国ですから、それにメキシコ人系の人がいないと街がまわらないんですよ。レストランのキッチンとか、ゴミの清掃とか、全部彼らがやってますから。だから、アメリカの人たちが英語を話せない人たちに対してのコミュニケーションの仕方を、ある意味わかってるんです。

――肌の色が違うとか、そういった人種差別はないんでしょうか。
やっぱり、人種差別はあります。われわれオリエンタル系への差別というのもあります。とくに田舎のほうへ行くと、昔の戦争体験の話とか、そこで日本人は嫌いだっていう人もいますし。私も、実際、テキサスへ行って、老夫婦に拳銃を突きつけられたこともありますよ。撃つとかじゃなくて、ショッピングモールでたまたま駐車場を歩いていたら、この辺うろうろするんじゃねえよという感じで銃を見せるんです。見せるだけなんです、出て行けって。差別的なことってまだあるのはあります。

――英語でやりとりするのは努力しないでできたんですか?
いや、それは努力というよりも、時間がかかるわけです。3ヶ月くらい居ると、大体こういう感じなのかなというのがわかってきますね。半年すると、自分の言葉が通じてる、通じてないというのがわかってきます。たとえばマクドナルドに行ってコーヒーをオーダーするとコーラが出てくるとか。またオーダーすると、今度は、「うちじゃコピーはできない」ってなったりね、そういうのを経験するんですよ。そうすると、自分の言うことが通じてないんだなと。で、シェアハウスにいる友達に聞くわけです。一緒に生活してますからね。そしたら、彼らが教えてくれるんです。たとえば、コーヒーというときにFはこうだよと。そういうので練習するわけです。時々、彼らが言うことがわからなかったら、もう1回言ってくれとか、もうちょっとシンプルに言ってくれと。大体、週末はビデオ借りてきて、みんなで映画見るんです。ポップコーン食べながら、でっかいアイスクリーム食べながら。そのときに、映画に字幕はもちろんないじゃないですか。終わったときに聞くんですね、主人公はあそこでなんでああいうこと言ってたんだと。すると、彼らが教えてくれる。その繰り返しなんです。

――そうすると、学校で習ったわけじゃなくて、暮らしの中から学んでいったわけですね。
周りにいる人が自分の先生なんです。辞書なんです。

――ボキャブラリーも増えていくというわけですね。
そうですね。

――その時は、何か仕事をしておられたのですか?
じつは、私、200万円くらい持って行ってたんです。手持ちの少しの現金と、あとはクレジットカードを持っていたわけですが、それで十分、半年くらいは生活できたと思います。そのあとは、日系のお花屋さんがあるんですが、ツテでその花の卸売業へ行くと、日系一世の方が作っているバラ園とかのお店があるんです。名前は日本人なんですが、みんな二世、三世なので日本語をちょっとは話すんだけど、英語です。そういうところで雇ってもらえるんです。

私の場合はビザが3ヶ月しかなくて、いわゆるビザ・アウェイヴァ―というんですが、日本人はビザ無しでアメリカに3ケ月間住めるわけなんです。それが終わって、自分にビザがないということを初めて知って、グリーンカードが手に入ってからでないと働いてはいけないんです。グリーンカードが当選して手に入ってから初めて働かせていただくことになりました。ビザ無しで働いたら、それが見つかった時には、日本へ送り返されます。

――いま、振り返ってみて、ニューヨークは好きですか?
一番好きですね。何がいいかというとね、やっぱり刺激的だと思います。いろんな文化といろんな人が入り乱れているのと、食べ物もニューヨークのもののほうが好きかもしれません。ただ、暮らしやすいのはウエストコースト。ロサンゼルスとかサンフランシスコとか、こっちのほうが暮らしやすいと思います。人がのんびりしてるし、気候も1年を通してあんまり雨は降りませんし。とくにロサンゼルスは日系の人がたくさんいますから。スーパーにしても、本にしても、ビデオとかにしても充実してますよ。

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――21年間アメリカにおられて、グリーンカードも取得した。
大体どういった生活をしておられたのですか?

働き始めると、月給じゃないんです。2週間に1回、チェック、小切手をくれるわけです。大体、2週間の最後の金曜日にもらえるんです。2週間払い。アルバイトしてお金を少し貯めては休むんです。レンタカーを借りて、友達と一緒に旅に行くんです。ニューヨークに拠点を置いているんですけれども、今度は違う州に行こうと。違う州に1ヶ月くらいいたり、で、また戻ってきてバイトして、また違う州へ行って何週間かいたりして、ということをやって全部回りました、アラスカ州以外は。ずーっと車で行くんですが、そういうのを繰り返しているうちに、あっという間に7年とか10年が経っちゃいました。

アメリカ全土回るじゃないですか。そしたら英語がまた違うし、出会う人も違うし、州ごとに雰囲気が全く違うんです。行く先々でバイトをちょっとやらせてもらったり、英語で交渉ができるようになってくるんです。いろんな経験をしましたね。アメリカの車は壊れるんですよ。日本車がいかに素晴らしいかがわかりました。何もない、我々はデザート、砂漠地帯っていうんですけど、そこら辺でパンクすると、もうどうしようもないわけです。エンジンが焼きついちゃったり。その時は嫌なんだけど、いま考えると、それが面白い経験になったわけなんですが、次の町まで押し続けて修理してもらう。修理してもらうんだけど、お金がないから、交渉なんですね。そんな感じの経験をいっぱいさせていただいて...

――どんどん英語がうまくなりそうですね。
そうですね。困ったときほど、がんばらなければいけない。知らない言葉はいっぱいあるんだけど、知ってる言葉で戦っていく。

(つづく)

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