講師インタビュー

楽しい筆ペンあそび

書家砂川 雅美

「書」との出会いは、3歳のときだった。近くに書道教室があった。
友達が通っていたので一緒に行ってみようかなと、何気なく通い始めた。
ピアノや体操も習っていたけれど、書道だけが続いた。
その後、社会に出て、一旦は「書」から離れるのだけれど、やはりあきらめられなくて、エイヤッと仕事を辞めて「書」の道へ。
不安はなかった。「書」を続けていてよかったと、いま、心から思っている。

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――「書」との出会いは3歳とのことですが、その後、ずっと続けておられたのですか?
大学の国文学部で書道を専攻しました。卒業後は銀行へ就職したのですが、その頃は「書」を使って何かしようとか全く考えていませんでした。 でも、やっぱり「書」を続けたいという気持が自分の中にいつもあり、思い切って銀行を辞めて、まず、ホテルの筆耕から始めました。

――安定した職場から飛び出すことに不安はありませんでしたか?
親を泣かせてしまいましたが、不安はなかったですね。考えるより先に行動するタイプなので。大丈夫かなと思いながらも、やってみました!

――やってみてよかった?
(大きくうなずいて)やってよかったと思っています。自分にしかやれない仕事なので。銀行だったら、自分が休んでも誰かが代わりをやれる。いまは自分が休んだら休校になります。失敗しても全部自分に返ってくるけれど、楽しさも全部自分に返ってくる。手応えがあるんです。

練習は、量より質。

――「書」の魅力って何でしょう?
勉強だったら答えがある。「書」には正解がない。そこが面白い! 生徒さんに教えるときも、私の文字を真似してくださいとは言いません。その人の個性を活かして、美文字を書くコツを覚えていただければと思っています。皆が同じ文字を書いていたらパソコンと同じ。個性を活かして上達していただければ。 文字は相手に伝えるためのものなので、相手にわかりやすく、読みやすく書くのが基本です。相手のことを考えてほしいです。一日セミナーでも文字は変わるんですよ。たった1回の練習でも簡単に誰でも上達します。練習は量より質です。

――最近、パソコンが普及して字を書く機会が減りましたね。
そうなんですよ。だから段々文字が書けなくなる。脳は新しい情報をよく覚えているので、子どもの頃字を書いたことを忘れてしまいます。字を書いていた記憶が薄れていくのです。やはり危機感があるのか、企業でも美文字講座をよくやっています。企業からの依頼も多いです。

――書道パフォーマンスはどんなことをされるのですか?
企業の式典やオープニングパーティなどで大きな文字を書きます。企業名や、座右の銘、社訓、その会合のテーマなどを書くことが多いです。袴や着物をリメイクした衣装を特別にオーダーメードしています。

――外国の方に喜ばれそうですね。
以前、国際的なフォーラムがあったのですが、90パーセントが外国人。英語でスピーチして書道パフォーマンスをしたら、とても喜ばれました。

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文字を書く時間は、
あわただしい毎日の中で自分と向き合う時間。

――話が飛びますが、いつもお洒落ですね。
(笑)人に見られる仕事ですので、服装には気をつけています。大学で教えたり、書道パフォーマンスをしたり、こんな先生におしえてもらいたいと思われたいですから。自分が習うとしても、お洒落な先生のほうがいい。 ジムに行って身体も鍛えています。太極拳をして姿勢をよくしたり、所作がきれいになるように日々心がけています。生活感を感じさせたくないですね。すべて「書」のため、自分自身の環境を整えています。

――すごい! 真似できません。ところで、ハルカス大学では『楽しい筆ペンあそび』という講座を担当していただいています。この講座で受講される皆さんに伝えたいことは何ですか?
楽しくお稽古してほしいんです。シーンとした教室は苦手です。机が前を向いている教室ではなくて、島を作って皆が顔を見合わせながら楽しく学べるようにしています。お稽古と同時に、交流の場ですから。

――書道をしていると、どんないいことがありますか?
文字を書く時間を作ると、忙しい毎日の中で自分と向き合えます。集中力がつきます。 それに、人間関係をスムースにします。手描きのものをちょっと添えると、気持のこもったものになるので、相手との関係が円滑になります。ぽち袋とか、名刺とか。書道は伝統文化で堅苦しいものと思われていますけれど、気軽に始めてほしいんです。次の世代に伝えるために、子ども向けの創作書道教室もやっているのですが、子どもたちには遊びとして楽しく書いてもらっています。

――『楽しい筆ペンあそび』の講座の特徴はどんなところにありますか?
単に文字の練習だけでなく、自分の作品を創ってもらえます。創ったものをふだんの暮らしの中に取り入れて使っていただけます。お稽古も楽しいですが、日常生活でも使って楽しんでいただけます。

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――他に、どんな講座をしておられますか?
ボールペン習字、筆ペン習字、就職のための美文字講座などです。きれいな文字で履歴書を書く講座などもやっています。やはりきれいな文字の履歴書は採用者の目にとまりやすいですよね。社会人になってからも、お礼の手紙を書くときやいろいろ役立ちます。

――ぜひ、いずれ、ハルカス大学でもいろいろな講座をやっていただきたいです。そういった講座を通じて生徒さんたちとの印象に残るエピソードなどありますか?
近頃は、文字を見て泣いたり、笑ったりすることが少なくなっています。書道パフォーマンスをすると、私が書いた文字を見て泣いた人がおられて嬉しかったです。思いをこめて文字を書くので、その思いが通じて人の心に感動を呼び起こしたら嬉しいです。

――今後の計画は?
自分の作品作り。教えるのも楽しいけれど、お店のロゴとかそういったものを残したい。自分が亡くなっても、それらは残ります。もっと勉強して作品を蓄積して、いつか個展もしたいです。

――書道を始める人へメッセージをお願いいします。
堅苦しくなく、気軽に始めてほしい。「書」ってこんなに楽しいんだと思ってもらえるはずです。

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